2024.04.02 新年度が始まりました。

令和6年度が始まりましたね。
考古資料館は昨日が休館日がだったため、実質今日から新年度スタートです。
新年度を迎えた考古資料館ではちょっとした変化があります。
それは・・・

ばば~ん!!

考古資料館の常設展示図録が完成し、今日から考古資料館で販売を開始します。
考古資料館の常設展示がこの1冊に詰まっています。
販売価格800円(消費税込み)です。

これまで考古資料館に来られて展示を見られているお客さんのうち、特に考古学の専門家や博物館関係の方から「こんな資料が有ったんですね~」と驚かれることがあり、うれしく、誇らしく思う反面「それだけ知られていなかったんだな」と残念に思うこともあったのですが、ひとえに考古資料館に何があるのか外に向けて発信できていなかったのが原因。
考古資料館にどんな資料があるのか外に発信していくツールとして常設展示図録はとても有効だと思っています。

興味のある方、資料館の受け付けに設置していますので、一度手に取って見ていただけたら幸いです。

作品の投稿ありがとうございます

考古資料館ではかれこれ5年ほど『歴史が薫る徳島市の風景写真展』を開催しています。徳島市内の歴史を感じさせる風景を写真に撮っていただき、資料館でその写真を展示するというものです。PR活動が足りなかったせいなのか、開始して以降なかなか作品の投稿が増えず加えて新型コロナの流行による外出自粛などのせいか、作品投稿数に伸び悩んでいる今日この頃です。
今年は4月に2件、5月に1件の作品が投稿があり出だし好調なのですが、6月になってすぐに投稿していただいた写真がとても面白く、勉強になったので紹介させていただきます。

今こそ欲しい鉄道  P.N.美ヶ さん

応神町の古川という場所にかつて鉄道の駅があったとのことでそのあたりの現在の風景を写していただいたものです。作品の投稿本当にありがとうございます。

古川まで鉄道が通っていたことを私も初めて知り驚いたのですが、調べてみると戦前に阿波電気軌道(のちに阿波鉄道)という鉄道会社が存在し、鉄道が運営されていたそうです。現在のJR四国の鳴門線や廃線になった鍛治屋橋線は阿波電気軌道の路線で、のちに国有化されて国鉄の路線になりJR四国に引き継がれたという経緯があるそうです。
グーグルマップを見るとわかりますが、吉成駅から佐古駅に続く線路に対して左右対称に開くように道路がありますが、これが古川まで続いていた線路の名残のようですね。吉成駅から古川駅の間には中原駅があり、この駅からは徳島の中心地まで連絡船が通っていたそうです。
残念ながらこの路線については国有化されることなく戦前に廃線となってしまいました。ちなみに阿波電気軌道という名称ながら電車は一度も走ったことが無く廃線まで蒸気機関車が走っていたそうです。

古川駅があった場所にそれを伝えるような名残りは何も無いようで、投稿していただいた美ヶさんも古い地図と駅の近くにあるお寺を目印に駅の場所を探されたそうです。
お寺を目印にしてフィールドワークをするのは歴史地理学では正しいやり方なんですよ。意外かもしれませんが神社は社名はそのままに結構場所を変えたりします。これを遷座といいますが戦災にあったり災害にあったりすると「縁起が悪い」ということで移転するんですね。他には氏子の転居にあたって神様だけ置いていくのは偲び無いということで、一緒に引っ越してしまうケースもあります。それに対してお寺はあまり場所を変えません。その理由を記し始めると長くなってしまうので割愛しますが、お寺が移転しないというよりも神社は移転しやすいので神社を目印にするよりもお寺を目印にした方が間違いが少ないと言われています。

作品のタイトルにもあるように路線が今でも残っていたらどんな感じだったんでしょうね。少なくとも古川駅があった場所のそばに建つ四国大学の学生さんは通学が楽だっただろうなぁ。吉野川を横断して徳島市街地へぬける水上交通も観光の名所になったかもなぁと想像してしまいます。そんなことを思いながら歴史散歩がしたくなる作品を送っていただき本当にありがとうございます。

考古資料館では引き続き『歴史が薫る徳島市の風景写真展』への作品投稿をお待ちしています。投稿していただいた写真は随時考古資料館のラウンジにて掲示していますので、ぜひご覧ください。折に触れてこのブログでも紹介していきたいと思います。
詳しくは下記のURLをクリックしてください。

http://www.tokushima-kouko.jp/rekishi_photo.html

レキシ・フォト・トクシマ 第1回 須恵器を撮る

写真を通して徳島市の文化財を発信する企画として昨年度から開催しているレキシ・フォト・トクシマ。今年度第1回目は“ブツ撮り”に挑戦ということで、考古資料館内で須恵器を撮ってみました。

レキシ・フォト・トクシマのうりは何といってもプロのカメラマンによる撮影指導があること。今回は昨年度に引き続いて徳島県美術家協会の写真部会長で徳島ヴォルティスの公式カメラマンでもある上野照文先生に来ていただきました。先生には機材一式まで持ってきていただきました。ありがとうございます。

今回は“須恵器を撮る”ということで古墳時代から平安時代にかけての須恵器を用意し、須恵器の歴史や見るポイントなどを当館の学芸員が説明をした後、上野先生による撮影の説明があり、参加者の皆さんによる撮影が始まりました。

被写体になる須恵器を変えてみたり、背景を変えて撮ってみたり。上野先生も参加者さんの質問に答えていただいたり、ちょっとしたアドバイスをされていました。

最後に参加者さんがとられた写真を上野先生に見ていただいたり、上野先生が撮られた写真を皆さんで見たりしてお開きになりました。

学芸員は仕事として資料写真を撮るのでどうしてもそういう写真しか撮れなくなってしまうのですが、今日の皆さんが撮られていた須恵器の写真、いろんな切り口で撮られていて学芸員としてとても新鮮な気分になれました。
参加していただいた皆さん、今日の写真をぜひ歴史が薫る徳島の風景写真に投稿してください。
よろしくお願いします!!

そして上野照文先生、今回もありがとうございました。

加茂名小学校へ出前授業

今年度初の出前授業で加茂名小学校へ行ってきました。
今回の出前授業では6年生2クラスを対象に火おこしと勾玉づくりに挑戦してもらいました。

火おこし体験では舞鑽(まいぎり)と呼ばれる火おこし具をつかって挑戦してもらいました。
皆さん上手に舞鑽の火おこし具を回すことはできるのですが、なかなか火種をつくれず…
やっとこさ火種ができて、おがくずを入れた火皿に火種を移してもなかなか発火にまでは至らず、いつもとは異なる感じに学芸員も「????」でした。

最初のクラスの火おこし体験が終盤に差し掛かったころに気づいたのですが、前日の雨で地面にしっかり水分が吸収されたところに夏を思わせるような日差し。火種を受けるために火鑽臼(ひきりうす)の下に敷いていた紙がすっかり湿気ていました。おがくずも湿気を吸って発火しにくい状態になっていたのだと思われます。

2クラス目の挑戦ではなるべく地面からの湿気がない場所で挑戦してみましたが、それでもいつもの半分くらいしか発火にまで至りませんでした。

勾玉づくりでは大まかに勾玉の形にカットされた滑石(かっせき)と呼ばれる石を材料にして3種類の紙やすりで削って、磨いて勾玉に仕上げていきます。

考古資料館の勾玉づくりの出前授業では白っぽい滑石と薄ピンク色の滑石を持っていき、どちらか一つを選んでもらって勾玉をつくってもらっています。ここ2,3年は白っぽい滑石の方が人気なようです。その前は薄いピンク色の滑石の方が圧倒的に人気だったのですが、世代によって好みが変わってくるみたいです。
当館の白っぽい滑石はやや濃いめの緑の模様の入った滑石を選んでいます。削っている最中はほとんど目立ちませんが、磨いていくとその模様がくっきりはっきりしてきます。どんな模様だったのか友達と見せ合いながら勾玉づくりも盛り上がっていました。

今回の出前授業では火おこし体験が少し残念な結果になってしまいましたが、考古資料館では事前に申し込んでいただければ基本的にいつでも火おこし体験ができます(勾玉づくりも)。加茂名小学校の6年生の皆さん、考古資料館での火おこしリベンジいつでもお待ちしています。

考古資料館の出前授業に興味を持たれた方は考古資料館教育支援のご案内のページをご覧ください。

とくしま好古楽倶楽部を開催しました

今日は今年度初のとくしま好古楽倶楽部を開催しました。

本来なら5月に第1回目のとくしま好古楽倶楽部で火おこしに挑戦する予定だったのですが、新型コロナウイルス感染予防に伴う臨時休館になったため、第2回にあたる今回が今年度初1回目というややこしい感じになっています。

今回のとくしま好古楽倶楽部は鋳造で鏡をつくってみるという内容です。

はじめに古代の鏡について説明をおこなった後、

展示室で徳島市内の遺跡から出土した古墳時代の鏡をいろいろ観察してもらいました。

展示室で古墳時代を鏡を見学した後、研修室に戻って鏡づくりです。
今回は140℃程度で溶ける低融点合金を使って鏡をつくってみます。
合金が溶ける様子もしっかり観察。

加熱した合金が液状になったところで、鋳型に流し込みます。

鋳型から鏡を取り外したら、鏡面を研ぎます。

鏡面が均等に平らになるまで研いだ後は研磨剤を使ってひたすら磨きこみます。

磨き終われば完成です。
しっかり磨きこむとちゃんと鏡として使えるくらいピカピカになります。

今回のとくしま好古楽倶楽部でも大勢のボランティアさんに参加していただき円滑に進めることができました。

ご参加いただいた皆さん、ボランティアのみなさん、ありがとうございました。

遺跡と遺物に学ぶ考古学講座 第1回 阿波国分寺に学ぶ

5月29日に遺跡と遺物に学ぶ考古学講座の第1回目の「阿波国分寺に学ぶ」を開催しました。

遺跡と遺物に学ぶ考古学講座は、これまで考古資料館で毎年開催していた考古学入門講座が新型コロナウイルスの感染予防の観点から中止になったことをうけて企画された講座です。
昨年度の下半期から実験的に開催し、受講していただいた方からの意見を基に昨年度より若干形態を変えて開催しています。

昨年度の遺跡と遺物に学ぶ考古学講座では、国分寺建立の詔が出て創建された阿波国分寺と現在の阿波国分寺には途絶していた期間があるため両者は別ものという考えから阿波国分寺“跡”をテーマにして開催したのですが、その際に「阿波国分寺の庭園を見たかった」というご意見が多数寄せられたので、今年度第1回目のテーマとして阿波国分寺さんを選びました。

資料館内で全体説明をおこなってからいざ出発
移動の途中、創建当時の阿波国分寺の寺域の北限と推定されている場所で説明

阿波国分寺に到着して早速阿波国分寺の庭園へ。ご住職に阿波国分寺の庭園について説明をしていただきました。

阿波国分寺の庭園は安土桃山様式の庭園であるため、その時期に造園されたものと考えられていましたが、発掘調査の結果江戸時代の後期に大掛かりな改修がおこなわれていたことが分かったそうです。

ご住職の説明を聞きながら

ご住職からは庭園の世界観などについて様々なお話を聞かせていただきました。

最近改修が終わった本堂

ご住職によると庭園は午前中が見ごろとのことです。庭園を眺めながら一日過ごせるとのことです。
今度、いろんなカメラを持って、この庭園で1日過ごしてみたいと思います。

庭園の拝観は拝観料300円が必要になります。

レキシ・フォト・トクシマ 第1回 参加者募集中です

昨年好評をいただきました実験的企画、レキシ・フォト・トクシマを今年度も開催することになりました。
レキシ・フォト・トクシマは写真を通して徳島市内の歴史的魅力をみんなで発信していこうという目的で、考古資料館による解説にプロカメラマンの先生による撮影指導を加えた写真撮影会を考えていただければと思っています。
昨年は徳島市内の遺跡に足を運び、そこで写真を撮ってみるという内容で進めてきましたが、今年度の第1回は6月20日(日)の午前10時から正午までの予定で考古資料館で考古資料館所蔵の土器を撮ってみるという企画で計画しています。

講師は上野照文先生です。

第1回の写真撮影の講師の先生は上野照文先生です。
上野先生は徳島県美術家協会理事で写真部会長を務められる傍ら徳島ヴォルティス公式カメラマンとしてご活躍されています。
昨年度は万年山墓所での撮影でご指導いただきました。
一眼レフカメラでの撮影に加えてスマートフォンでの撮影の方法についても丁寧に教えていただきました。また、この際にとても印象的な万年山墓所の写真も撮られており、考古資料館スタッフ全員が感動しました。
レキシ・フォト・トクシマは徳島市にゆかりのある文化財の写真撮影会ではありますが、高性能なカメラでないと参加できないわけではありません。普段使っているカメラで十分ですし、昨年度の参加者の半数はスマートフォンのカメラで参加されています。
フィルムカメラでの参加でも構いませんが、先生のご指導を受けやすいよう、その場で撮った画像が確認できるデジタルカメラでの参加をお勧めします。

5月15日より参加者の募集を開始しています。
考古資料館事務室へお電話にてお申し込みください。
電話:088-637-2526
臨時休館が解除された後は考古資料館事務室へ直接申し込みも可能になります。
イベントの詳細については考古資料館レキシ・フォト・トクシマのページをご覧ください。

5月になりました

4月があっという間に通り過ぎ、風薫る5月を迎えました。
新型コロナウイルス感染拡大に伴い臨時休館している徳島市立考古資料館は昨年と同じく静かな大型連休を迎えています。

ただ、臨時休館といっても職員は休みではなく、通常通りの勤務シフトでお客さんの来ない資料館であれこれやっています。

そういうわけで、5月1日より募集を開始しするイベントのご案内です。

とくしま好古楽倶楽部 第2回 鋳造を体験してみよう
 約140℃で溶ける低融点合金を材料に古代の鏡のミニチュアをつくります。鏡面はしっかり磨くと実際に鏡のようにピカピカになります。  
対象は小学生以上の方で定員は20名です。

遺跡と遺物に学ぶ考古学講座 第1回 阿波国分寺
 昨年度実施した阿波国分寺跡の回で要望が多かったことから、今回は阿波国分寺さんのご協力をいただき、庭園を拝観します。修復された本堂と一緒に安土桃山様式の庭園について学びます。
対象は中学生以上の方で定員は20名です。

どちらも先着順になります。

現在臨時休館中のため、電話のみの受付になっております。
電話番号:088-637-2526

申し込みお待ちしております。

現地説明会に行ってきました

今日は徳島県埋蔵文化財センターさんは発掘を行っている南蔵本遺跡の現地説明会に行ってきました。
徳島県立中央病院の南側にER棟を建設するということで、それに伴う発掘調査です。「ER棟ができたらグリーン先生やベントン先生が来るのかな」とありもしない事を考えながら発掘調査現場に行きました。

今回の発掘調査で注目されるのは弥生時代前期前葉の畑の跡が見つかったことです。
水路に対して直角の向きに畝が並んでいますが、畝と畝の間の低いところに水路から水を引いていたと考えられています。

「畝、低いなぁ」と思いますが、畑が埋没した後の土圧で畝が圧縮された結果なんだそうです。水害で畑が流されたというよりは水没したというのが正しいようで、畑が耕されてそれほど間もないうちに埋没したようで、当時の畑の姿をそのまま残しているそうです。
この畑で何が栽培されていたのかはまだわからないそうです。今後畑跡の土を水で洗って栽培植物の種子やプラントオパールの検出を試みるようで、結果が楽しみですね。